こんにちは、春日です。
前回の記事では、文京区の中古マンション在庫が508件(専有面積40㎡以上・オーナーチェンジ除く)に達し、一般売出とリノベ再販で価格改定の「効き方」が違うことをデータで示しました。
前回の集計から約8週間。10月18日時点で、在庫は572件まで増えました。
東京都区部の中古マンション市場も、明確に動きが鈍っています。東日本レインズの9月度サマリーレポートによると、東京都区部の成約件数は1,385件で前年同月比−30.6%(9か月連続の減少)。成約㎡単価も130.39万円(前年同月比−0.9%)と2か月連続で前年を下回りました。
※出典:東日本レインズ マーケットウォッチ2026年9月度
こうした環境の中で、文京区では今何が起きているのか。
今回は、その後の在庫・成約・価格改定の変化から、10月18日時点の文京区の中古マンション市場を確認します。
在庫572件 ─ 2月末から約63%増えた推移を振り返る
まず在庫の推移を整理します。
| 時期 | 在庫 | 新規売出 | 成約(掲載終了含む) |
| 2月末 | 351件 | — | — |
| 3月末 | 385件 | 131件 | 94件 |
| 4月末 | 396件 | 109件 | 99件 |
| 5月末 | 402件 | 77件 | 82件 |
| 6月末 | 438件 | 110件 | 69件 |
| 7月末 | 484件 | 116件 | 76件 |
| 8月末 | 521件 | 99件 | 69件 |
| 9月末 | 541件 | 82件 | 62件 |
| 10月18日時点 | 572件 | 70件(途中) | 32件(途中) |
※成約等には掲載終了(売りやめ)を含みます
※在庫件数は専有面積40㎡以上・オーナーチェンジ除く
※AND LENSは2026年2月開始
前回記事で508件(8月24日時点)だった在庫は、8月末521件、9月末541件と月を追うごとに増え、10月18日時点で572件に達しました。
月別で見ると、8月と9月は新規売出が減ったものの、成約(掲載終了含む)件数を上回る状態が続き、月末の在庫も増加しています。特に目立つのは10月の新規売出ペース。18日間で70件、月末まで換算すると100件を超えるペースです。
なお「成約」には、実際に売れた物件だけでなく、売るのをやめて掲載を終了した物件も含まれています。取りやめの理由までは追跡できないため、純粋な成約件数はこれより少ないかもしれません。また、売りやめ後に再掲載されるケースもあるため、在庫の増減は「新規売出−成約等」と必ずしも一致しません。
成約件数は6月以降4か月連続で前年割れ ─ 9月は−36%
AND LENSが把握した文京区の成約(掲載終了含む)について、前年同月と比較します。
| 月 | 2025年 | 2026年 | 前年比 |
| 1月 | 56件 | 79件 | +41.1% |
| 2月 | 86件 | 109件 | +26.7% |
| 3月 | 80件 | 94件 | +17.5% |
| 4月 | 75件 | 99件 | +32.0% |
| 5月 | 78件 | 82件 | +5.1% |
| 6月 | 85件 | 69件 | −18.8% |
| 7月 | 81件 | 76件 | −6.2% |
| 8月 | 73件 | 69件 | −5.5% |
| 9月 | 97件 | 62件 | −36.1% |
2026年1〜5月は前年を上回っていた成約(掲載終了含む)が、6月以降4か月連続で前年同月を下回っています。
特に9月は前年97件に対して62件と、前年同月比−36.1%。東京都区部全体でも前年同月比−30.6%と大きく落ち込んでおり、文京区も同様の傾向です。
9月は東京都心で月間30日すべてで降水を観測し、月降水量696.5mm(平年比310%)と9月として観測史上最多の雨量を記録しました。(出典:tenki.jp)
長雨が内見日程や購入検討に影響した可能性もあります。
1〜5月は前年同月比+5%〜+41%と活況だっただけに、6月以降の変調は明確です。天候要因を差し引いても、在庫の積み上がりと買い手の慎重姿勢は続いています。
値下げ延べ252件 ─ 価格改定の動きを確認する
もっとも市況の変化を感じるのが、価格改定の動向です。
9月18日〜10月18日の集計期間中に、延べ252件の値下げが確認されました。
※同一物件が期間中に複数回値下げした場合は、改定の都度1件としてカウントしています。
| 週 | 値下げ件数 |
| 9/18〜20 | 30件 |
| 9/21〜27 | 26件 |
| 9/28〜10/4 | 71件 |
| 10/5〜10/11 | 75件 |
| 10/12〜10/18 | 50件 |
| 合計 | 252件 |
※9月18日〜20日は3日間、それ以外は各7日間の集計です。
9月末から10月前半にかけて、価格改定が多く確認されています。次に、この延べ252件の値下げが、どの面積帯・築年帯で確認されたのかを見ていきます。
面積帯 × 築年帯で見る値下げの分布
延べ252件の値下げを、面積帯と築年帯でクロス集計しました。
| 築20年以内 | 築21-35年 | 築36年以上 | 合計 | |
| 40㎡台 | 17件 | 3件 | 33件 | 53件 |
| 50㎡台 | 23件 | 24件 | 14件 | 61件 |
| 60㎡台 | 24件 | 16件 | 15件 | 55件 |
| 70㎡台 | 20件 | 22件 | 7件 | 49件 |
| 80㎡以上 | 10件 | 9件 | 15件 | 34件 |
| 合計 | 94件 | 74件 | 84件 | 252件 |
もっとも値下げが多いのは50㎡台(61件)。次いで60㎡台(55件)、40㎡台(53件)。特定の面積帯に偏らず、幅広い区分で値下げが広がっています。
特徴的なのは40㎡台×築36年以上の33件。このセグメントは前回記事でも「値下げしても動きづらい」ゾーンとして指摘しました。在庫が積み上がり、連鎖的に値下げが繰り返されている構造が見えます。
一方、築年帯別の合計では築20年以内が94件ともっとも多く、築浅物件にも値下げが波及しています。
売出価格から10%超下げて成約した割合、7月以降は4割前後に
成約価格が判明している物件について、新規売出価格からの乖離率(値引き幅)を月別に集計しました。特に注目すべきは、売出価格から10%超下げて成約した物件の割合です。
| 月 | 10%超下げて成約した割合 | 平均乖離率 |
| 2025年計 | 22.2% | −5.7% |
| 2026年1月 | 19.5% | −5.6% |
| 2026年2月 | 19.6% | −5.5% |
| 2026年3月 | 28.3% | −7.1% |
| 2026年4月 | 25.0% | −7.2% |
| 2026年5月 | 30.3% | −7.0% |
| 2026年6月 | 26.8% | −7.4% |
| 2026年7月 | 44.4% | −9.5% |
| 2026年8月 | 41.2% | −7.0% |
| 2026年9月 | 39.4% | −8.9% |
2025年は年間を通じて22.2%でした。2026年に入っても1〜2月は20%前後と同水準でしたが、3月以降は25〜30%に上昇。そして7月以降、3か月連続で4割前後に跳ね上がっています。
平均乖離率も、2025年の年間平均−5.7%に対して、2026年7月は−9.5%、9月は−8.9%でした。月ごとの変動はあるものの、2025年全体より売出価格と成約価格の差が大きくなっています。
これは9月だけの一時的な現象ではなく、7月以降の構造的な変化です。「いくらで出すか」よりも「いくらなら売れるか」を基準にした価格設定が、これまで以上に重要になっています。
掲載日数 ─ 中央値107日、181日以上が4分の1超
10月18日時点で売出中の572件について、掲載開始からの経過日数を集計しました。
| 経過日数 | 件数 | 比率 |
| 0-30日 | 100件 | 17.5% |
| 31-60日 | 76件 | 13.3% |
| 61-90日 | 68件 | 11.9% |
| 91-120日 | 68件 | 11.9% |
| 121-180日 | 109件 | 19.1% |
| 181-365日 | 134件 | 23.4% |
| 366日以上 | 17件 | 3.0% |
掲載開始からの経過日数の中央値は107日です。これは、現在売出中の物件の半数が、掲載開始から107日以上経過していることを示します。成約までにかかる期間を示す数字ではありません。
掲載開始から181日以上が経過している物件は151件(26.4%)で、全体の4分の1を超えています。
エリア別に見る在庫件数と掲載期間の違い
10月18日時点で売出中の572件を、前回記事と同じ町名ベースの15エリアに分類しました。エリアごとの在庫件数と、掲載開始からの経過日数を比較します。
| エリア | 在庫 | 中央値日数 | 90日超の割合 |
| 小石川 | 94件 | 119日 | 54.3% |
| 本郷 | 69件 | 106日 | 55.1% |
| 本駒込 | 48件 | 136日 | 66.7% |
| 千石 | 47件 | 124日 | 68.1% |
| 大塚 | 39件 | 84日 | 48.7% |
| 千駄木 | 37件 | 91日 | 54.1% |
| 湯島 | 34件 | 125日 | 58.8% |
| 根津・弥生 | 32件 | 99日 | 56.2% |
| 目白台・関口 | 29件 | 87日 | 48.3% |
| 水道 | 28件 | 162日 | 60.7% |
| 白山 | 28件 | 114日 | 57.1% |
| 西片・向丘 | 26件 | 71日 | 38.5% |
| 音羽 | 25件 | 121日 | 64.0% |
| 春日・後楽 | 24件 | 124日 | 66.7% |
| 小日向 | 12件 | 107日 | 75.0% |
小石川の在庫は、前回の77件(8月24日時点)から94件へ、17件増加しました。今回も15エリアの中で最多となっています。
掲載開始から90日超の物件が多いエリア
現在の在庫に占める、掲載開始から90日超の物件の割合が高いのは、以下のエリアです。
・小日向: 75.0%(12件中9件が90日超)
・千石: 68.1%(47件中32件が90日超)
・本駒込: 66.7%(48件中32件が90日超)
・春日・後楽: 66.7%(24件中16件が90日超)
これらのエリアでは、現在の在庫の3分の2以上が、掲載開始から90日を超えています。ただし、小日向は在庫12件と母数が小さく、数件の増減でも割合が大きく変わる点に留意が必要です。
一方、西片・向丘は90日超の割合が38.5%で、今回の15エリアの中では最も低くなっています。ただし、新規売出が増えた場合にもこの割合は下がるため、比率だけで成約の速さを判断することはできません。
エリア×面積帯で見る売出物件の選択肢
次に、各エリアの在庫を面積帯別に分けました。同じエリアでも、面積帯によって売出物件の件数は異なります。
| エリア | 40-60㎡未満 | 60-80㎡未満 | 80㎡以上 | 合計 |
| 小石川 | 27件 | 46件 | 21件 | 94件 |
| 本郷 | 29件 | 27件 | 13件 | 69件 |
| 本駒込 | 23件 | 20件 | 5件 | 48件 |
| 千石 | 12件 | 28件 | 7件 | 47件 |
| 大塚 | 20件 | 14件 | 5件 | 39件 |
| 千駄木 | 22件 | 7件 | 8件 | 37件 |
| 湯島 | 20件 | 14件 | 0件 | 34件 |
| 根津・弥生 | 17件 | 11件 | 4件 | 32件 |
| 目白台・関口 | 17件 | 13件 | 5件 | 29件 |
| 水道 | 10件 | 15件 | 3件 | 28件 |
| 白山 | 17件 | 10件 | 1件 | 28件 |
| 西片・向丘 | 12件 | 11件 | 3件 | 26件 |
| 音羽 | 15件 | 7件 | 3件 | 25件 |
| 春日・後楽 | 10件 | 7件 | 7件 | 24件 |
| 小日向 | 3件 | 3件 | 6件 | 12件 |
小石川の60㎡以上80㎡未満は46件で、今回のエリア×面積帯の組み合わせでは最多です。千石の同じ面積帯も28件あり、それぞれのエリアで比較検討の対象となる物件が複数出ています。
売却を検討する方は、条件の近い競合物件と比べて、自分の物件の価格や特徴がどう見えるかを確認することが重要です。購入を検討する方は、希望条件に近い物件を並べ、価格と条件のバランスを比較する材料として活用してください。
まとめ ─ この数字をどう読むか
今回の集計では、売出在庫の増加と、成約件数(掲載終了含む)の前年割れが確認されました。また、成約価格を確認できた物件では、売出価格から10%超下げて成約した割合が、7月以降3か月続けて4割前後となっています。
ただし、エリアや物件条件によって状況は異なります。売却・購入の判断では、市場全体の傾向と、検討する物件の条件を分けて考えることが重要です。
売却を検討している方へ
1. 在庫が増えた今は、競合物件を確認して価格を設定する。
2月末351件→10月572件。8か月で+63%。10月は18日間で新規売出70件と、秋に入り売り出しのペースが加速しています。今から売りに出す場合、半年前とは競合の数がまったく違うことを前提に価格を設定する必要があります。同じエリア・面積帯の中でも、駅距離・築年数・室内状態などが近い物件と比べ、自分の物件の価格がどう見えるかを整理しましょう。
2. 競合の価格改定と、自分の物件への反応をあわせて確認する。
9月18日〜10月18日の集計期間中に、延べ252件の値下げが確認されました。同一物件の複数回の改定を含むため、252物件が値下げしたという意味ではありません。競合の価格が変われば、自分の物件の相対的な割高・割安感も変わります。問い合わせや内見の状況とあわせて、価格設定や販売方法を見直す必要がないか確認しましょう。
3. 売出価格だけでなく、実際の成約価格を基準にする。
2025年は10%超の値下げ成約が全体の22.2%でしたが、2026年7月以降は3か月連続で4割前後に上がりました。競合の売出価格は、必ずしも実際に売れる価格とは限りません。直近の成約事例も確認し、希望する売却時期と照らし合わせて、売出価格と成約を目指す価格を検討することが重要です。
購入を検討している方へ
1. 選択肢が広がっている。
572件の在庫は、AND LENSが追跡を開始して以来の最多です。エリア・面積帯を問わず選択肢が増えており、特に小石川エリアの60-80㎡は46件、千石の同帯も28件。比較検討がしやすい環境になっています。
2. 気になる物件の価格改定は、再検討のきっかけにする。
前回の記事で示したとおり、値下げが効いた物件は比較的早い段階で動く傾向があります。直近1か月で延べ252件が値下げに踏み切っており、気になる物件に価格改定があったら、内見を検討してみてもいいかもしれません。
3. 「いくら下がったか」より、「条件に対して妥当か」を見る。
選択肢が増えている今は、同じエリア・面積帯の物件を比較しながら検討できます。値下げの有無や掲載期間だけで判断せず、直近の成約事例に加え、立地・築年数・室内状態・管理状況も確認しましょう。「いくら下がったか」よりも、「条件に対して妥当な価格か」を見極めることが大切です。
おわりに
ここまでお読みいただきありがとうございました。
参考までに、10月18日時点でSUUMOで文京区の中古マンション(専有面積40㎡以上)を検索すると1,000件を超える売出物件が表示されます。
※SUUMOの掲載件数には重複(同一物件)があり、AND LENSの集計とは基準が異なります。
10年以上文京区のマンション市場を見てきましたが、1,000件を超えたのは初めてのことです。在庫の積み上がりが、体感としても過去にない水準に達しています。

ここ数年、文京区の中古マンション市場では売出価格の上昇が続いてきました。今起きているのは、上がりすぎた価格に対して買い手が追いつかなくなり、調整が入っている段階だと見ています。売出価格と成約価格の乖離が広がり、値下げが増えているのは、売り手が市場の実態に合わせ始めた動きです。
上昇一辺倒の相場から、「いくらなら売れるのか」を見極める局面に変わってきています。
AND LENSでは引き続き、文京区の売出物件・成約事例・価格改定履歴を追跡していきます。
「自分のマンションは、今いくらで売れそうか」
「探しているエリアでは、どの物件を比較すればよいか」
そんなときは、ぜひAND LENSをご活用ください。
※掲載データはAND LENS(住まいるTV)が独自に収集・集計したものであり、文京区内のすべての売出物件・取引を網羅するものではありません。各集計の対象・定義をご確認のうえ、売却・購入を検討する際の参考情報としてご活用ください。