コラム

5ヶ月で在庫3割増|2026年上半期の文京区中古マンション市況

こんにちは、春日です。

AND LENSでは2026年2月から文京区の中古マンション売出情報をデータベースで追跡しています。毎日データを更新しているのですが、最近ひとつ、気になる数字があります。

7月11日時点で、売出中の物件が456件。
※専有面積40㎡以上・オーナーチェンジ除く

2月末時点では351件でした。5ヶ月で約3割増、毎月じわじわと積み上がっています。

売れていないわけではありません。毎月70〜130件の新規売出が出て、同じく70〜100件が消えていく。ただ、「入ってくる数」が「出ていく数」を上回り続けている。その差がそのまま在庫として残っている状態です。

月末時点売出中の件数前月比
2月末351件
3月末385件+34
4月末396件+11
5月末402件+6
6月末438件+36
7月11日456件

※ AND LENSの売出データベース(専有面積40㎡以上・オーナーチェンジ除く)による集計

在庫はどこに積み上がっているのか

456件がまんべんなく増えているのか、それともどこかに偏っているのか。2月末と7月11日時点を比較してみます。

▼面積帯別

専有面積2月末7月11日増減
40〜50㎡63件94件+31(+49%)
50〜60㎡97件102件+5(+5%)
60〜70㎡59件96件+37(+63%)
70〜80㎡72件95件+23(+32%)
80㎡以上60件69件+9(+15%)

増加率が突出しているのは60〜70㎡帯(+63%)と40〜50㎡帯(+49%)です。

60〜70㎡は文京区では2LDK〜3LDKのファミリー層向けの中心帯。ここに在庫が急増しているということは、売り手が「このサイズなら需要があるだろう」と考えて出しているのに、買い手のペースが追いついていない可能性があります。

▼築年数別

築年数2月末7月11日増減
〜10年83件93件+10(+12%)
11〜20年58件90件+32(+55%)
21〜30年81件116件+35(+43%)
31年超129件157件+28(+22%)

増加率で見ると築11〜20年(+55%)と築21〜30年(+43%)が目立ちます。

築10年以内はもともと出物が少なく、出れば動きやすい傾向があるため増えにくい。一方、築31年超は母数が大きいものの増加率は22%と相対的に穏やかです。在庫が膨らんでいるのは築10〜30年の中間層であることがわかります。

▼価格帯別

価格帯2月末7月11日増減
〜5,000万円38件29件−9(−24%)
5,000万〜7,000万円40件57件+17(+42%)
7,000万〜1億円68件85件+17(+25%)
1億〜1.5億円118件153件+35(+30%)
1.5億円超87件132件+45(+52%)

5,000万円未満は減っています。一方、1.5億円超が+52%と最大の増加率。高価格帯ほど在庫が積み上がりやすいことが数字にはっきり出ています。

リノベ再販が4割を占めている

在庫の内訳でもうひとつ目を引くのが、リノベ再販物件の比率です。

AND LENSでは、買取再販業者がリノベーションして売り出している物件を分類しています。

区分2月末7月11日増減
リノベ再販123件(35%)192件(42%)+69(+56%)
一般売出228件(65%)264件(58%)+36(+16%)

リノベ再販は5ヶ月で+56%と、一般売出の+16%を大きく上回るペースで増えています。いま売出中の物件の5件に2件はリノベ再販です。

毎月の新規売出でも、3月以降は新規の3〜4割がリノベ再販という状態が続いています。

業者は「仕入れ+リノベ費用+利益」で価格を組み立てますが、この高値市場では強気の価格設定で売り出すケースが目立ちます。反響がなければ値下げに動くものの、仕入れ原価という下限がある以上、下げ幅には限界があります。結果として、買い手の目線に届かないまま在庫として積み上がりやすい。在庫急増の主因のひとつがここにあると考えられます。

売れ残りやすい物件の特徴

現在の456件について、売出経過日数の中央値価格改定(値下げ)済みの割合をカテゴリ別に見てみます。

価格帯別:経過日数と値下げ率

価格帯中央値90日超の割合値下げ済み
〜5,000万円79日41%55%
5,000万〜7,000万円74日39%37%
7,000万〜1億円88日49%52%
1億〜1.5億円96日53%57%
1.5億円超78日45%52%

1億〜1.5億円帯は経過日数の中央値が96日と最も長く、半数以上が90日を超え、値下げ済みも57%。在庫のボリュームゾーンでありながら、もっとも回転が悪い価格帯です。

築年数別:経過日数と値下げ率

築年数中央値90日超の割合値下げ済み
〜10年114日59%57%
11〜20年90日50%56%
21〜30年76日43%53%
31年超77日42%46%

意外かもしれませんが、築10年以内が中央値114日で最も長い。先ほど「在庫が増えにくい」と書きましたが、裏を返せば、動きやすい物件はすでに捌けており、いま残っているのは価格面で折り合いがつかなかった物件が中心ということです。築浅は相場自体が高いため、売出価格が買い手の想定を超えやすい。売主としても「高く売れるはず」という意識が強く、結果として長期化する傾向が見えます。

面積帯別:経過日数と値下げ率

専有面積中央値90日超の割合値下げ済み
40〜50㎡78日44%48%
50〜60㎡90日50%53%
60〜70㎡77日41%48%
70〜80㎡90日52%54%
80㎡以上106日52%59%

80㎡以上は中央値106日、値下げ済み59%。広い物件ほど総額が上がるため、購入予算が合う層が絞られ長期化しやすい。

いまの文京区を一言でまとめると

「売る人が増えたのに、買う人のペースは変わっていない」

・在庫は456件(7月11日時点)——2月末比で約3割増
・増えているのは60〜70㎡・築11〜30年・1億円超のゾーン
リノベ再販が在庫の約4割を占め、増加ペースは一般売出の約3.5倍
・456件のうち半数以上が値下げ済み約2割が半年以上の長期在庫

成約件数は減っていないので、「売れなくなった」わけではありません。でも、売りに出す人が増えすぎて、市場が消化しきれていない。その結果が在庫の積み上がりです。

▼売却を検討している方へ

在庫が多いということは、買い手から見れば「選べる物件が多い」ということです。つまり、比較される前提で売り出すことになります。

売却の期限がある方は、最初の価格設定が重要です。同じエリア・同じ面積帯にいま何件の競合がいるかを確認し、その中で選ばれる条件になっているかを見極めてください。とくに1億円超の価格帯は在庫が厚く、最初の設定を外すと値下げを重ねても長期化しやすい状況です。

一方、急がない方は、高めの価格で様子を見るという判断もあり得ます。ただし、在庫が増えている局面では「待っていれば売れる」とも限りません。定期的に競合の動きを確認し、反響がなければ早めに戦略を見直すことをおすすめします。

▼購入を検討している方へ

在庫が増えている局面は、買い手にとっては選択肢が広がっている時期です。半年前にはなかった条件が市場に出てきています。

ただし、在庫が増えているからといって全体の価格が下がっているわけではありません。新しく出てくる物件は依然として強気の価格設定が多いのが実態です。

この市場で大事なのは、個別の物件が適正な価格かどうかを見極める力です。文京区は総戸数30〜50戸前後のマンションが多く、同じマンション内の取引事例だけでは判断がつきません。近隣の似た条件の物件がいくらで売り出され、いくらで成約しているか。値下げ履歴があるなら、なぜ売れていないのか。そこを読み解けるかどうかで、判断の質が変わります。

AND LENSでは文京区約1,100棟の売出・成約データを棟ごとに整理しています。近隣マンションの成約価格、現在の売出状況、価格改定の履歴まで確認できます。検討中の物件が「高いのか、妥当なのか」を判断する材料として活用してください。

変化があればまたこのコラムでお伝えしますね。

この記事を書いた人
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春日

文京区の不動産会社で働く共働きの子育て世代です。業界歴15年/宅地建物取引士。文京区の中古マンション市場に特化したデータツール「AND LENS」を運営しています。

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